クリックできる目次
選ぶならガス?電気?灯油?
冬の厳しい北海道の暮らしの中で切っても切れないのがそう!
「暖房」
夏のエアコンの電気料金に比べてはるかにコストがかかりますよね…
その中でも「オール電化は高い」とか「ガスの方が安い」なんていういろいろは噂がありますが、そんな噂にケリをつけたいと思います(笑)
暖房に使うエネルギーと単価
まずは暖房に使う主なエネルギー源と単価について考えていきましょう。(2023年8月現在)
灯油(1L) | 113.93円 旭川市公式ページ |
都市ガス(1㎥) | 110.79 旭川ガス公式ページ ※えこっと24の場合 ※各使用量の平均値 |
プロパンガス(1㎥) | 1,281円 旭川市公式ページ ※業者によって価格は異なる |
電気(1kWA) | 50.48円(午後時間) 43.43円(朝晩時間) 26.36円(夜間時間) 北海道電力公式ページ ※eタイム3プラスの場合 |
都市ガスは使用量に応じて単価が異なるのでそれぞれの平均値を使うことにします。
プロパンガスと灯油はは業者によって価格の差があるので旭川市のデータから平均値を使うことにします。
電気はオール電化向けプランの「eタイム3プラス」で計算することにします。
これだけ見るとなんとなく電気が安そうに見えますね。
しかしそれぞれ熱量が違うので、わかりやすいように単位を揃えていきましょう。
単位を揃えてみる
ここではそれぞれの熱源の単位が違うので「J(ジュール)」で揃えていきたいと思います。
学校の授業で習ったはずですが、すっかり記憶から消えている方も多いことだと思います(笑)
まず灯油は「36.7MJ」
続いて都市ガスは「45MJ」
そしてプロパンガスは「99MJ」
・電気は1KWAあたり「3.6MJ」
電力量の単位として、1 キロワット (= 1000 J/s) の電力を 1 時間 (= 3600 s) 消費したときの電力量である 1 キロワット時 (= 1 kJ/s × 3600 s = 3.6 MJ) がよく用いられる。
Wikipedia
MJ(メガジュール)あたりの料金を見てみる
単位あたりの熱量 | 単位あたりの料金 | 1MJあたりの料金 | |
都市ガス(㎥) | 45MJ | 110.79円 | 2.46円 |
プロパンガス(㎥) | 99MJ | 1,281円 | 12.93円 |
灯油(L) | 36.7MJ | 113.93円 | 3.1円 |
電気(KWA) | 3.6MJ | 50.48円(午後時間) 43.43円(朝晩時間) 26.36円(夜間時間) | 14.02円(午後時間) 12.06円(朝晩時間) 7.3円(夜間時間) |
このように1MJ辺りの料金を算出してみると都市ガスが一番安いことがわかります。
続いて灯油が2番手ですが、都市ガスとそこまでの差はないと言ったところ。
そして、プロパンガスと電気に至っては都市ガス・灯油に比べて3~4倍ほども高いことがわかります。
電気料金の値上げの影響もありますが、割安なはずの深夜料金を使っても都市ガスの約3倍もコストがかかることにはちょっと驚きですね。
これを見る限りでは、巷で噂の「都市ガスは安い・オール電化は高い」は完全に正しいということになります。
これじゃ旭川の多く工務店が都市ガスの住宅を勧める理由もなんだかわかる気がします。
しかし!「なんだやっぱり都市ガスが安いんじゃん」とか「やっぱりオール電化はダメだ」なんて言うのはちょっと気が早い!
オール電化にはとっておきの隠し技があるのです!
その名も「ヒートポンプ」!
次は「ヒートポンプ」も含めた機器の効率にスポットを当てていきたいと思います。
暖房効率を比べてみる
先程はそれぞれのエネルギーの1MJ辺りの価格を出しました。
今のところオール電化とプロパンガスが高いってことがわかったと思います。
しかし面白いのはここから。
それぞれの熱源ごとの機器の効率を見ていきましょう。特に電気だけは「ヒートポンプ」と言った秘密兵器があるのです。
ヒートポンプとは?
ガスや灯油はそれ自体を燃やすだけに対して、一部の製品には空気熱を回収して利用することが出来る機器が存在するのです。
これを「ヒートポンプ」といいます。
ヒートポンプは、ガスや石油による燃焼方式に比べ、CO2排出量の大幅削減を実現する技術として注目を集めています。「ヒートポンプ」は大気中などの熱を集めて移動させるシステムです。電力は熱を運ぶ動力として使うため、少しの電力で大きな熱を利用することができます。
気体を圧縮すると温度が上がり、膨張させると温度が下がる性質を活用した技術です。ヒートポンプの中では、熱を運ぶ役割をする冷媒(フロンガスや二酸化炭素など)が圧縮による温度上昇と膨張による温度低下を繰り返しながら循環しています。
東京電力エナジーパートナー公式サイト「ヒートポンプとは」
暖房や給湯の時には、冷媒の温度が外気より下がった時に空気熱を取り込み、冷媒の温度が上昇した時に熱を放出することにより、空気熱を運んで暖房や給湯に利用しています。冷房時は屋内と屋外が逆になり、熱が取り込まれることにより室温が下がります。
この効率をCOPや、APFで表したりします。
COPはある特定の条件下での効率を表すのに対して、APFは特定条件下での一年間の効率を表しているのでより実際の効率に近いものとなっています。
スーパーウォールビルダーズファミリー「『COP』『APF』の違いについて」
さてここで代表的なヒートポンプ機器であるエアコンのスペックを見てみましょう。
今回は日立製作所の寒冷地エアコン「メガ暖しろくまくん」のスペックを参考にしていくことにします。
日立グローバルライフソリューションズ「住宅設備用エアコン」
例えばこの最新式の日立の20畳用寒冷地エアコンだとなんとAPF「6.2」!
暖房COPだと「7100W(暖房能力)÷1,700W(消費電力)≒4.1」にもなります。
もちろんヒートポンプを搭載していない電気式の暖房機器などは「COP1」になります。
ガス・灯油の効率を見てみる
続いてはガス・灯油の機器効率を見ていきましょう。
ガス、灯油はそれ自体を燃やすだけなのでCOPでいうと「1」です。
両方とも代表的な暖房手段は給湯器で沸かしたお湯を使った「温水暖房」ですが、それに使われる給湯器で代表的なのがガスが「エコジョーズ」、灯油が「エコフィール」になります。
まずはガス給湯器のエコジョーズのスペックを見ていきましょう。
Rinnai公式サイト
エコジョーズの効率は95%のようですね。約5%のロスがある計算になります。
続いては灯油給湯器の「エコフィール」のスペックを見ていきましょう。
CHOFU公式サイト
エコフィールの効率は95%でエコジョーズと同じく5%のロスが発生します。
それぞれの効率を勘案してみると?
これを考慮したうえで先程の各エネルギーごとの単価を再計算してみましょう。
単位あたりの熱量 | 単位あたりの料金 | 1MJあたりの料金 | |
都市ガス(㎥) | 45MJ×0.95 42.75MJ | 110.79円 | 2.59円 |
プロパンガス(㎥) | 99MJ×0.95 94.05MJ | 1,281円 | 13.62円 |
灯油(L) | 36.7MJ×0.95 34.865MJ | 113.93円 | 3.26円 |
電気(1kWA) | 3.6MJ×COP4.1 14.76MJ | 50.48円(午後時間) 43.43円(朝晩時間) 26.36円(夜間時間) | 3.4円(午後時間) 2.94円(朝晩時間) 1.78円(夜間時間) |
効率を含めて再計算してみるとなんと電気が最安になりました!ただし、夜間料金の時間帯という条件付きですが…
次点で都市ガス。やっぱり都市ガスは安定して安いですね。
こうして各機器の効率を考慮して単価をみてみると意外と電気もそこまで割高ではないことがわかります。
ただし電気は夜間料金では最安なものの、それ以外では都市ガスに及びません。
ただ、プロパンガスに関しては残念ながらちょっと話にならないですね…
プロパンガスを利用している方は業者によって料金が違うので、ぜひ一度料金の比較をしてみてほしい所ですね。
今回のまとめ
計算の結果、夜間料金という条件付きですが一番単価が低いのが電気ということがわかりました。(2023年9月時点の料金)
しかし空気の熱を回収する機器ということからも分かる通り、気温の低下に弱いのが「ヒートポンプ」の最大の弱点です。
実際の効率を見てみないことにはわかりませんが、冬季は-25℃を超えることのある旭川ではここまでのCOPを発揮することは難しいでしょう。
今回の計算上は「COP4.1」で計算していますが、現状でも「割安な夜間料金にCOP4.1で計算」してもわずかに都市ガスを上回っているだけです。
ここから更にCOPが低下してしまえば、夜間料金でも都市ガスの方が割安になるのは明らかですし、夜間料金帯は気温の低下も厳しい時間帯なのでCOP4.1で運転するのは厳しいと思われます。
もう一つ追い打ちをかけると、氷点下になるとヒートポンプの効率とは別に室外機の凍結防止ヒーター(メーカーによるが100W程の消費電力)が動作するので実際の消費電力は更に増加します。
現状では、昼間の料金に関しては都市ガスが割安かつ、電気に関しては夜間料金帯かつCOP4.1以上での運転という条件があるので総合的に見ると現時点では都市ガスが一番安いと言わざるを得ないでしょう。
ただし、オール電化に関して一つだけ救いなのは、夏季の給湯に関しては外気温が高いのでヒートポンプのメリットである高効率運転が出来、なおかつ夜間電力で運転することが可能なので都市ガスよりも安くお湯を沸かすことが出来そうなところでしょうか。
ただ一つ注意してほしいのは、これはあくまでも8月の料金なので、暖房需要期となる冬季間はのそれぞれの単価がどうなることちょっと推移を見ていきたい所です。
実際に昨年(2022年)の冬季間の都市ガス料金は驚くほど高かったので…
それともう一つ、今回はあくまでも各エネルギーの単価だけの計算です。
今回は基本料金に関しては考慮していないので実際の請求金額に関しては最安が違ってくることがありますのでご了承ください。
いつか機会があれば基本料金を含めた計算もしてみようと思います。
コメントを残す